2023/05/14
COVID-19新規感染症は、5/8から感染症法上の位置づけが、「2類相当」から季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げられ、感染者数の日報も出なくなりました。現状外来の様子からは、発熱症状のCOVID-19感染はごく一部であり、ほとんどCOVID-19以外が原因です。しかし、発熱および咳症状の方はかなり多くなっています。
GW前から、発熱および発熱後の咳悪化の方は、コロナ以前より多くなっています。GW中も含めて、寒暖差や強風などの天候変化に体がついていっていないことが強く影響していると推測されます。また、コロナ明けで行動範囲が拡大することで、人との接触が増えていることもありますが、それでも爆発的にCOVID-19の流行が再燃する様相は、現状ないようです。
私たちはこの3年間で、発熱=COVID-19、咳悪化=COVID-19の概念が刷り込まれてしまいましたが、コロナ禍にあっても、COVID-19以外の感染症はありました。全ての感染症の原因は調べることはできず、重要な感染症のみの検査に留まっており、風邪ウィルスも様々です。また、現在は細菌感染症がかなり多く、細菌感染による咽頭・扁桃炎、アレルギー性鼻炎の悪化が誘因で、咳喘息や気管支喘息発作が併発する方は多く受診されています。時に思わぬ肺炎もあります。発熱でCOVID-19やインフルエンザの検査が陰性だから問題ないことはありません。
この時期に花粉症が持病のある方は、特に咳喘息や気管支喘息発作を起こしやすくなります。そのほか、疲労、ストレス、睡眠不足や女性の産後疲労や更年期も、リスクになります。花粉症や慢性アレルギー性鼻炎が持病の方は、鼻の粘膜だけでなく、気管支上皮も鼻と同じようにアレルギー状態が高まっています。そこにウィルスや細菌の感染があると、鼻炎だけでなく咳症状も悪化してきます。例えるなら、鼻炎のくしゃみ、鼻汁症状が、肺では咳、痰に相当します。細菌感染が強いと、黄色い鼻汁や痰がからんできます。感染症状では、初期に発熱症状を伴いますが、寒暖差アレルギーでは、初期に発熱はほぼなく、軽い咽頭痛から始まり、咽頭痛は2-3日で軽減しても、鼻炎・咳が悪化してくる傾向があります。
ですから慢性アレルギー鼻炎や気管支喘息が持病の方は、普段からそのコントロールが重要です。気管支喘息では、吸入ステロイドと気管支拡張剤が入った吸入薬を、日頃から吸入しておくことは肺のアレルギー状態を安定させる上で非常に重要です。気道過敏性を高まったまま放置しておくと、ウィルス感染症や急な天候の変化で、喘息は急速に悪化します。一方、慢性アレルギー性鼻炎は、専門的には耳鼻科になりますが、意外に普段コントロールしていない方が多いと感じます。いつも鼻がぐずっている方は、感染すると鼻炎だけでなく、咳症状の悪化が必発ですので、注意してください。ただし、慢性アレルギー性鼻炎は原因や症状程度が様々であり、治療に難渋することはよくあります。
女性の産休明けの方は非常に注意が必要です。4-5月は、産休明けで勤務を再開する方が多くなりますが、体力が低下している上に、子育て疲労も伴っていることから、思わぬ咳喘息や喘息発作を引き起こします。その他、引っ越しなどでほこりを吸ったり、疲労が悪化、さらに環境が変わることでも発症します。このような呼吸症状は、特にアレルゲンがなくても、疲労や天候変化で発症することがあるので注意しましょう。
これから初夏の花粉症はイネ科が主体ですが、イネ科花粉は喘息の誘因にもなります。よく認知されていないようですが、この時期のアレルギー性鼻炎の悪化が、イネ科花粉が原因のことはよくあります。また、犬猫やウサギなどのペットが喘息の誘因のこともあるので、ペットを飼うようになってから咳鼻炎や皮膚掻痒がでやすいなどの症状がある方は、アレルギー検査をした方が良いでしょう。また、アレルギー持ちの方が、これからペット飼う場合は、事前に採血でチェックした方が無難です。
また、この時期は紫外線が強く、暑さに慣れていないことで、脱水傾向に陥りやすく、脳梗塞や心筋梗塞を発症することがあります。特に中高年の方で、ゴルフなどに行く方は注意が必要です。高血圧、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病が持病の方は、特に普段からその管理が重要ですが、暑さ対策には十分気を付けなければいけません。水分補給は勿論ですが、併せて塩分の補充も重要です。また、むやみにスポーツドリンクを摂ることで、糖分過剰になり、糖尿病を悪化させることもあります。
これまでコロナ禍で、行動を自粛されていた方も多いと思われますが、急に戸外での活動や飲み会などが増えることで、体調を崩すことがあります。自分の身体を過信せず、特にこれから蒸し暑さが強い日があるので、普段から適度な運動や、暑さに慣れておくことが大切です。持病も含め日頃からの体調管理には十分注意を払いましょう。